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質問なるほドリ:最低賃金はなぜ必要なの?=回答・市川明代

2012/08/07

 <NEWS NAVIGATOR>
 ◇弱い立場の労働者保護 民主党、09年に1000円を公約
 なるほドリ 最低賃金(さいていちんぎん)ってなんで決める必要があるんだろう。
 記者 労働者は企業より弱い立場にありますよね。だから不当に安い賃金で働かされることのないように、最低ラインを決めているんです。1959年に最低賃金法が施行されてから毎年、見直されています。
 Q どう決めるの?
 A まずは中央最低賃金審議会(しんぎかい)で、労働者側と企業側、中立的な立場の委員が中小企業の賃金引き上げ率などを勘案(かんあん)し、目安額を決めます。それを参考に、地方最低賃金審議会が地域の事情に応じて都道府県別の最低賃金を決めます。
 Q 賃金って、企業と労働組合(ろうどうくみあい)が話し合って上げていくばかりじゃないんだね。
 A 高度経済成長(こうどけいざいせいちょう)以降の日本では、労使(ろうし)の話し合いで給与が右肩上がりに上がっていくのが一般的でした。しかしバブル崩壊(ほうかい)後、大きく変わり、特に90年代以降は何年働いても低賃金のままという非正規(ひせいき)労働者の割合が増え、労働組合に加入していない人も多くなっています。
 Q 最低賃金で働く人が増えているのかな。
 A そうですね。特に、地域の経済力が弱い地方都市などで増えており、ハローワークに行っても、給与の欄(らん)に最低賃金しか書かれていない求人票(きゅうじんひょう)が少なくありません。こうしたことから、最低賃金引き上げの必要性は年々高まっているんです。
 Q なのにどうして、なかなか上がらないんだろう。
 A さまざまな分野で国際的な価格競争(かかくきょうそう)が激しくなり、企業は労働力の安いアジア諸国に工場を移すようになりました。企業側は「国内労働者の賃金が上がると海外流出が一層進み、国内の雇用(こよう)が減る」「中小企業の倒産(とうさん)が相次ぐ」などと訴えています。このため労働者側も仕事を失うことへの不安が強まり、賃金を大幅に引き上げてほしいと言いづらくなっています。
 Q 最低賃金ぎりぎりで働いている人たちは今回の引き上げ(時給で平均7円)で納得できるのかな。
 A 民主党は09年の衆院選で最低賃金を1000円にするという公約を掲げ、10年には労使間の代表が「できるだけ早期に全国最低800円以上、20年までに全国平均1000円」で合意しました。今も「1000円」は労働者たちの悲願です。賃金が上がらないと物が売れず、デフレがさらに広がり企業の首を絞める恐れもあります。低所得者(ていしょとくしゃ)を減らすため、最低賃金のアップとともに、中小企業の支援策にもっと力を入れる必要があります。(社会部)
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[毎日新聞社 2012年7月26日(木)]